| 【いないはずの朝】 | |
| 5:00 結局よく眠れないまま朝になってしまった。 部屋には、こういう民宿には珍しく文庫本がたくさんあった。 しかも 「金融腐敗列島」だったり「マークスの山」だったりと 全くこの民宿に似つかわしくない。 昨晩、どうせ眠れないやと思って文庫本を読んでいたが、一応布団に入り、しかし外の風の音を気にしながらのうたた寝で あった。うーん、今日もこの風が続けば 飛行機は飛ばないかも。。いよいよ 月曜に休む手配をとらなきゃならんかもしれない。。。 まあ、いいや。 6:00 寝ててもしょうがないので 食堂へ。 おばさんはもう起きてボーっとテレビを眺めていた。「おはようございます。風が強いですね〜」「あー、そうだねぇ。でも大丈夫じゃあないの〜」と 一切論理的ではないが妙に説得力のあるお言葉。「はいぃ」と空返事をしておき、再び寝る。 |
|
風が強い。 |
7:00 テレビの天気予報を横になりながら見る。「伊豆諸島南部には波浪警報・・・」と言っている。お!強風警報は出ていない。もう嫌というほど寝たので、ちょっと早めに家を出て底土港(そこどこう)へ向かって散歩。 風はまだ強い。前に船で八丈島に来たときに着いたのが底土港だった。宿のあった三根地区(みつね)からは歩いて20分くらいはあるだろうか。ちょっと長い散歩だった。 |
| 底土港はかなり荒れていた。防波堤に波が激しく打ち寄せる。昨晩、竹芝桟橋から かめりあ丸は出航しなかった。正解だな。これは。 | |
| 【災い転じて試飲す】 | |
坂下酒造さん。 |
8:00 坂下酒造さんへ見学に行く。宿からは近いはずなのだが、やはり迷ってしまった。相変わらず島の地図はあてにならない。案の定、看板もなにもないがそれらしきところにたどり着く。酒瓶が外に積み重なっている。坂下酒造さんは「焼酎 黒潮」などを製造している。代表取締役の槇野さんが案内してくれた。 |
一次発酵中の麦。 |
発酵中の麦の温度調節のために水を入れる槇野さん。 |
| 繰り返すが、八丈島の焼酎の基本は実は芋焼酎である。しかし、今 「伊豆の焼酎」といえば麦焼酎
というイメージが強い。それは今 島でサツマイモが取れなくなってきたことと、麦麹でも使う麦を原料に使う方が安価で手軽であることがそのイメージを生んでいるからなのだそうだ。オーナー曰く、「芋が入らないと八丈の酒じゃないよ。」重みのある一言である。 そう言えば、神津島の焼酎「盛若」は麦焼酎で本当にあっさりであったが、青ヶ島の焼酎「青酎」は芋の香りが非常に強く、「これが同じ伊豆諸島の焼酎なのか?」と疑問に思ったことがある。 これで謎が解けた。 。 |
|
| 麦を蒸してから麹菌を加え発酵させる(一次発酵)。その後適度に水を加えて温度調節を行う。ここで麹菌が育つのが40度付近。今は寒いので良いが温かくなってくると、扇風機で冷やさないと温度が上がり過ぎてしまうのだそうだ。その後
麦や芋を加え(二次発酵)、蒸留する。 |
|
| 「試飲してみますか?」「(おっ!待ってました!)いいんですか?」出てきたのは、ラベルのない一升瓶。マジックで“H14製造酒
麦40度”と書いてある。「これは来年くらいに『黒潮』になるやつだね。まだ作りたてだからアルコールのとげとげしさがあるね。」飲んでみると確かに強い。舌と喉で酒が主張している。朝から空きっ腹で飲むには
ちときつい。 続いて、「これはまろやかですよ。」と出てきたのは黄金色の液体。「こいつは、シェリー樽にしばらく置いたものなんですよ。味がまろやかになり、木の香りも乗って『バーボンのようだ』という人もいますよ。」ほーっ! 飲んでみると確かに豊かな香り。香りだけなら焼酎とは思えない。しかも麦ベースだから、大麦で作っているウィスキーやバーボンとも通じる味が感じられる。 ただウィスキーの蒸留は、焼酎のそれとは比べ物にならないほど純度を高くしなければならないそうで、「焼酎は簡単に作れるからねぇ」と槇野さんは少々自嘲気味に言った。 しかし、それは長年の経験がなければできない。 |
マジックで“H14製造酒 麦40度” |
左:シェリー樽漬け。 右:H14製造。 |
|
| 「僕は、焼酎を口に含んだ時の 舌が微妙なザラツキを感じる瞬間 とそこから放たれる原料の甘さとアルコールのキツさが入り混じった香りが鼻を通り抜ける瞬間が好きなんですよ。」
ってなことを話しつつ「青ヶ島の青酎が好きなんですよ」と続けると、「田崎さんは、青ヶ島に行って『青酎は日本の美味しい酒3本指に入る絶品だ』と言ったらしいですよ。」と槇野さん。 ?田崎さん? 「ほら、ワインで有名な田崎真也さんですよ。ここにも教え子を修行に来させたんですよ。」と言いながら槇野さんは 田崎さんの六本木のお店(カノン)の名刺をくれた。なんと田崎真也は焼酎にも精通していたのだ! 今の季節は焼酎造りをしているが、この作業は10月から翌4月くらいまでなのだそうだ。夏から秋にかけては暑すぎて、発酵に適した温度を維持できないという。その季節は 完成した焼酎の瓶詰めを行っているのだそうだ。 |
|
| 槇野さんはたまに東京に出てくるらしい。「やはり飛行機代は高くてねえ」と持ってきたのはANAマイレージ会員に送られてくる超割先行予約案内ハガキ。おーっ!ここでも超割は重宝されていたのだ。「本当は昨日帰る予定だったんですが、風で飛行機が飛ばなくて今日ここにいるという訳なんですよ。。。」
「西風が吹くと飛行機は降りられないからね。。。それはそれは。」 雑談をしていると、轟音が外で響いた。「1便着きましたね!」やった!今日は1便目が着いた! これで今日帰れるのは確実だ。「よかったね。」と喜びあいながら坂下酒造を後にした。 「本格焼酎のすべて(チクマ秀版社)」をいただいてしまった。 |
|
【復帰へ向けて】 |
|
| 9:10 公衆電話から空港に電話。運行状況を確認すると、なんと第1便は羽田に引き返したとのこと。おいおいっ。もう一泊しろってか?! 9:20 宿に戻る。宿のおばさんは、昨晩・今朝と全く同じ格好でテレビを見ている。「10:00頃に出ますよ。一応空港に行ってみます。」 「ああ、そう。その方がいいよ」 少し休んでから、宿を出る。昨夜はよく眠れなかったから、なんとなく体が重い。 |
船が欠航で本が入荷しない。。 |
| 10:00 空港まで20分。途中からは椰子の木が道の両側を飾る。空港はどのようになっているのか。。。行ってみると、待合室の席は全て埋まっていた。ひどくはないがいつもよりは人が多い。1便目が八丈島上空まで来ながら羽田に引き返したということは、自分の帰る順番もそれだけ遅れることを意味する。今日の2便目が来るのかどうか。。。とっくに到着時間を過ぎた空港のざわめきの中、何をするわけでもなくじっと放送案内を待つ。
放送で、特別空席待ち番号を呼び始めた。今度の飛行機は到着する見込みが立ったのか?
11:24 到着予定時刻を大幅に過ぎた。すると、突然外から轟音が! 上の展望デッキから拍手が聞こえてきた。 2便は到着したのだ。 「よかったよかった」とおじさんおばさん達が喜んでいる。「東京からすぐに行ける観光の島」に1泊でちょっと遊びにきて温泉でも。。。 という感じの団体。よかったですね。 |
|
| 11:40 2便の搭乗手続きは全て終了した。カウンターに尋ねると、残り空席は3便目が50席、4便(最終便)が60席程度だそうだ。しかし相変わらず「天候調査中」の条件付き運航である。 さて、僕の空席待ち番号だと次の3便目に乗れるかどうか微妙だ。 1便目が来ていれば間違いなく3便目に乗れるはずだが、その1便目は欠航となったので乗れる順番が繰り下がっている。 |
島の4酒造所の代表的 焼酎をブレンドした「島酎」 空港内で試飲できる! |
【心の安定】 |
|
澄み切った青空の下の八丈富士。 でも風はまだ強い。 |
次の3便目の搭乗手続きの時には空港にいなければならないが、それまで約2時間ある。
どこかに 行きたい! ということで、空港内で情報収集していると、なんと「レンタカー1時間1,000円(ただし空港のみ送迎)」というパンフレットを発見!まさにうってつけのプランである。これで近くの温泉に入ってこよう!早速電話してみると,「5分で空港にお迎えに行きますよ」とのことだった。 レンタカーの営業所に連れて行かれてみてびっくり。営業所の建物はキャンピングカーだった。。そして無造作に置かれた車が数台。私の借りた車はダイハツムーヴだった。「温泉に行きたいんですけど、1時間で大丈夫ですかね?」と店員のお兄ちゃんに聞くと「ぎりぎりですかね。。まあ大丈夫だと思いますよ。」と。 |
| ということで、「中之郷温泉やすらぎの湯」に向かうことにした。八丈島の温泉は島の南東部、三原山の麓に多い。「ふれあいの湯」「やすらぎの湯」「みはらしの湯」など色々な温泉がある。最も眺望がいいのはその名の通り「みはらしの湯」だと思うが、今回は1時間で空港まで戻ってこなければならないので、やすらぎの湯に行くことにした。道を急ぐ。 大賀郷の玉石垣を通り、大坂トンネルを通って樫立地区を過ぎ、中之郷地区を目指す。道路は海岸から大分高い位置を走るが、やすらぎの湯に行くためにはそこから海岸に向かってぐんぐんくねる道を降りていく。途中に裏見ヶ滝、裏見ヶ滝温泉、ブルーポート・スパTHE BOON(ザ・ブーン)がある(ここは水着着用の温泉)。やすらぎの湯は、もう少しで海岸に下りそうなところにある。 |
|
きれいな湯船。 |
300円也。浴室に入ってびっくり!みはらしが良い。違う意味で良い。ううーん外からも中の”景色”が良く見えそう。。。でもいい温泉。
昨日の天気からだいぶ回復した空の青が美しかった。湯船も趣きがあってよかった。ここは夕方に来るのがいいかも。 うーん夕日は真夏じゃないと方角的に見られないかもしれない。 やはり八丈島の温泉は「みはらしの湯」が一番! |
窓から見える美しい景色。 外からも中が見えそう。 |
|
| 、と色々思ったわりには5分で温泉を出、とんぼ返りで空港へ。帰りにしっかりとビールを調達。風呂上りのビールを八丈島空港・展望ブリッジにつながる階段の5段目・6段目に座って
味わいました。。 お土産やのおねえさんが変な目で見ていたような気もしたけど、まあいいや。 |
|
【波乱の収束】 |
|
| 14:40 発の羽田行き3便目にはやはり乗れなかった。残りの2時間は空いてきた空港ロビーの椅子でうたた寝。
しばらくすると発着案内の掲示板の「天候調査中」のサインが消え一斉に「おくれ」になった。これでホッと一安心。
18:00 4便目の搭乗手続きをスムーズに済ませ、定刻を大幅に遅れたANK832便は八丈島を飛び立った。残念ながらこの日の最終便であるこの飛行機に乗れなかった人が何人かいたようである。 船でも電車でも詰め込んでなんとか動かせるものだが、飛行機だけはどうしようもない。たとえ残り1名だって、乗れないときは絶対に乗れないのだ。「明日大事な商談があって、行かないと会社がつぶれる。」「今日会わなければ、何年後に再び会えるか分からない」 そういう理由は何の関係もない。だめなものはだめである。きっぱりとしている。 そんなことを考えながらも、どっときた疲れが眠気を誘う。45分程のフライトであった。眼下に東京の夜景がやけに明るく見える。なにか、この2日間にあったことが幻みたいである。 1日乗り放題の切符を使って1泊旅行ができたのは、ANKの粋なサービスだったのかもしれない。そんなわけないか。。。 |
|
| 八丈島トップへ | |||
| リンク集(準備中) |